難波で本当に旨い串カツはどこか。地元で何十年も呑み歩くベテランたちに問うと、誰もが声を潜めて特定の路地裏を指差す。今回の極秘取材で足を踏み入れたのは、法善寺横丁の石畳からわずかに逸れた路地に佇む、カウンターわずか8席の隠れ家だ。表に派手な看板は一切ない。暖簾に小さく染め抜かれた屋号だけが目印だ。
店主が揚げる串は、油切れの良さが極限まで追求されている。口に含んだ瞬間に衣がホロリとほどけ、中の具材が持つ本来の水分と旨味がジュワリと広がる。重たさは皆無。特筆すべきは、秘伝の自家製ウスターソースに潜ませたダシの深みと、隠し味の赤ワインだ。店主は語る。「串カツはスピードと衣の薄さが命。油の鮮度を落とさず、一瞬の火入れで素材の瑞々しさを閉じ込める。こればかりはチェーン店では真似できまへん」。地元民が観光客に教えたがらない理由が、その一串に凝縮されていた。