本作のヒロインであり、同時に最も哀切なドラマを背負っているのが美剣士・吹雪丸(CV:浦和めぐみ)です。凛々しい若武者として登場し、卓越した剣技で敵を切り伏せる吹雪丸ですが、物語が進むにつれてその性別が女性であることが明かされます。
吹雪丸が男として生きることを強いられた背景には、封建社会における家父長制の厳しい現実がありました。春日宿の領主である父には男子の跡取りがおらず、お家断絶を防ぎ領民を守るため、吹雪丸は幼少期より自らの女性性を封印し、「跡取り息子」として育てられたのです。
野原一家と野宿をする中で、温泉に入るシーンやしんのすけに胸を触られそうになって激昂する場面など、コミカルな描写を挟みつつも、彼女が背負った孤独と重圧が丁寧に描かれます。しんのすけに対してだけは次第に心を開き、危機に際して交わした「男の約束」は、彼女が自分自身を縛り付けていた呪縛から解放され、一人の人間として前を向くための精神的な支柱となりました。