4人主演という異例の構成で話題を呼んだ『いちばんすきな花』において、松下洸平が演じた春木椿の佇まいは圧巻だった。「男女の間に友情は成立するか」という普遍的なテーマを巡り、日常の些細な違和感や孤独を丁寧にすくい取る会話劇。大声を出すわけでもなく、派手なアクションがあるわけでもない。しかし、相手の言葉を受けてから返すまでの絶妙な「間」に、人間の生々しい感情が凝縮されていた。
所属事務所である株式会社キューブで演劇や音楽活動を並行して展開してきた経験は、台詞のリズム感や空間の把握能力にダイレクトに反映されている。言葉の裏にある感情を音として捉え、相手役のトーンに合わせて自身の芝居をチューニングする。共演者が「芝居がしやすい」と口を揃える理由は、この卓越した受容力にある。