すべての発火点は、年末の国民的番組である日本放送協会の『NHK紅白歌合戦』にあった。1980年代後半から過熱した美川憲一との豪華衣装対決は、お茶の間を熱狂させる年末の風物詩として列島に深く刻み込まれた。年を追うごとにセットは巨大化し、クレーンで宙を舞い、幾千もの電飾が閃光を放つ。その圧倒的な威容に、テレビの前にいた当時のゲーム世代は、画面の向こうに潜む最強の敵キャラクターを重ね合わせた。
日本の芸能界において、己のビジュアル演出をここまで極限のエンタメへと昇華させた歌い手は他にいない。荘厳でありながら、どこかポップで祝祭感に満ちたその佇まいは、旧来の演歌という枠組みを軽々と破壊していた。