歯車が狂い始めたのは、藤本勝巳の現役引退がきっかけだった。グラウンドを去った元スラッガーは、事業家への転身を模索する。しかし、勝負の世界で生きてきた男にとって、ビジネスの海はあまりにも険しかった。
夫の事業を支えようと、島倉は妻として奔走した。だが、そこに悪質な取り巻きや詐欺的な投資話が群がる。妻の名前や信用を利用した保証人契約、いわゆる「名義貸し」の手形が次々と乱発されていく。気づいたときには、夫婦の手には負えない膨大な債務が積み上がっていた。家の中に笑顔が消え、冷たい沈黙と疑心暗鬼がふたりの間に横たわるようになった。