単なる「スマートな皮肉屋」にとどまらない深みが彼にはある。少年時代、ボーイスカウト組織「ジュニア・レンジャー」に入隊しようとしたニックが受けた、草食動物の子供たちからの理不尽な口輪のいじめ。あの凄惨な記憶が、彼の屈折した生き方の原点だった。
「世界がキツネを信用しないなら、期待通りのキツネになってやる」という開き直りは、傷ついた自分の心を守るための防衛本能にほかならない。アイスキャンディー売りで見せるずる賢さも、生き抜くための知恵だったのだ。その重い過去を知ったとき、観客は彼がジュディに見せる不意の優しさや庇うような仕草に、涙を禁じ得なくなる。
劇中の視線や手の動き、ふとした表情の陰りには、彼が乗り越えてきた孤独が細かく描かれている。作品を何度も見返すことで、初見では気づかなかった優しさの伏線が幾重にも発見できる仕組みになっている。