花園神社の境内社には、本殿に劣らぬ知名度を誇る二つの社があります。一つは前述の威徳稲荷神社、もう一つは芸能人の奉納札が壁一面に並ぶ芸能浅間神社です。この二社を取り巻く俗信のなかでも特に広範に囁かれているのが、「強烈な縁切り神社なのではないか」という疑念です。
神社の公式由緒や祭神の神格において、威徳稲荷神社の本来の神徳は「開運・商売繁盛・子授け・夫婦和合・縁結び」であり、呪詛めいた縁切りを主目的とした神社ではありません。それにもかかわらず縁切りの噂が絶えない理由は、古くから神道文化に伝わる「悪縁を断ち切らなければ、真の良縁は結ばれない」という信仰の表裏一体性にあります。不倫関係の清算や悪友との決別、夜の街特有の人間関係のしがらみに悩む人々が、静寂と土俗性を持つこの稲荷に向かって「切実な断絶の祈願」を捧げてきた歴史が、長年積み重なり「縁が切れる強力なパワースポット」としてのパブリックイメージを形成してしまったのです。
一方、木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤヒメ)を祀る芸能浅間神社は、宇多田ヒカル氏の母である故・藤圭子氏の歌碑(『圭子の夢は夜ひらく』)が建立されていることでも知られています。劇団員やアイドル、人気俳優、夜業に従事するキャストまで、名声を追う人々が「己の才覚」を懸けて祈願する特異な熱量が境内に充満しています。この「承認と成功を渇望する生々しい情念」が絵馬やお札から発せられており、感受性の鋭い参拝者が不思議な体験として「背筋がゾッとするようなプレッシャー」を感知するメカニズムとなっています。