この「中和の罠」について、現場の専門家たちは以前から警鐘を鳴らしてきた。洗剤開発者・清掃専門家の茂木和哉氏は、自身の検証において「混ぜて使うのは界面活性作用やpHの恩恵を自ら捨てる行為であり、汚れ落としという観点では極めて非効率」と一貫して指摘している。酸とアルカリの長所を同時に享受しようとする発想そのものが、化学的には成立しないからだ。
また、ナチュラルクリーニング研究家の本橋ひろえ氏も、汚れの性質に応じた「単独使用」の徹底を推奨する。油汚れにはアルカリ、水垢には酸という基本原則を崩して混ぜてしまえば、期待通りの効果は得られない。国民生活センターに寄せられる相談やテスト情報を見ても、洗剤の不適切な混合による効果の希薄化や、誤った知識に基づく無駄な消費は後を絶たない。