広東住血線虫に感染した場合、体内に侵入した幼虫は消化管壁を貫通し、血流に乗って中枢神経系(脳や脊髄)へと移行します。人間は本来の終宿主(ネズミ)ではないため、幼虫は人体内で成虫になることができず、中枢神経系をさまよった末に死滅します。その過程で脳組織に激しいアレルギー反応と炎症が引き起こされます。
感染から発症までの潜伏期間は通常1〜3週間(平均約12〜16日)とされていますが、摂取した幼虫の数や個人の免疫状態によっては1日から30日以上の幅があります。
初期症状として現れるのは、一般的な風邪と見分けがつきにくい微熱、倦怠感、吐き気、腹痛などです。しかし、数日から数週間が経過すると、患者の手記や臨床報告において「人生で経験したことのない、頭が割れるような激痛」と形容される激しい頭痛へと移行します。
代表的な臨床症状は以下の通りです。
- 耐えがたい頭痛と項部硬直:首の後ろが板のように固くなり、前屈できなくなる典型的な髄膜刺激症状。
- 知覚異常・痛覚過敏:風が皮膚に触れるだけで激痛が走る、手足がピリピリと刺すように痛むといった神経障害。
- 好酸球性髄膜脳炎の発症:アレルギー反応に関わる白血球の一種「好酸球」が脳脊髄液中で異常増殖し、脳浮腫や頭蓋内圧亢進を招く。
- 視覚障害・脳神経麻痺:幼虫が眼球内に迷入することによる視力低下、失明、顔面神経麻痺、複視。
重症化した場合は痙攣、意識障害、昏睡に陥り、回復後も重篤な神経学的後遺症が残るケースや、命を落とす事例も確認されています。