鰻屋の暖簾をくぐると、「特上うな重」や「うな丼(並)」といった多彩なメニューが並びます。ネット上の口コミや知恵袋などでは「うな丼には質の劣る端切れが使われ、うな重には最高品質の鰻が使われている」という言説が散見されますが、専門店の調理現場においてこの認識は明確に否定されます。
老舗鰻専門店の店主や調理関係者の証言によると、基本的に同じ店舗であればうな丼もうな重も全く同じ池・同じ仕入れルートの鰻を使用しています。同一のタレと炭火で焼き上げるため、鰻自体の味や肉質に優劣をつけているわけではありません。
では、なぜあれほどの価格差が生じるのか。その最大の要因は「鰻の部位と使用量」にあります。
一般的なうな丼には、鰻半身(0.5尾)から3分の2程度が盛り付けられます。丸い丼鉢の形状に合わせ、厚みのある胴体部分を1〜2切れ乗せるのが標準的です。一方で、うな重は四角い重箱の表面を隙間なく埋めるため、丸ごと1尾、上位ランクになると1.5尾〜2尾(ご飯の間に鰻を挟む「中入り」など)を贅沢に使用します。
さらに見逃せないのが「肝吸い」の有無と副菜のコストです。うな丼には一般的な豆腐やワカメの味噌汁、あるいはお吸い物が添えられることが多いのに対し、うな重には鰻1尾から1つしか取れない希少部位を使った「肝吸い」がセットになるのが通例です。鰻のグラム数と付属品の積み上げこそが、うな重の値段の差の真相といえます。