1997年6月にリリースされた初代ポケモンオープニング曲『めざせポケモンマスター』は、キャラクターソングとしては異例となる累計売上約200万枚(ダブルミリオン)を記録し、平成のアニメソング史に燦然と輝く金字塔となりました。この楽曲の冒頭に配置された「マサラタウンにさよならバイバイ」という鮮烈なフレーズは、どのようにして生まれたのでしょうか。
作詞を担当した戸田昭吾氏と、作曲を手掛けたたなかひろかず氏のタッグは、当時ゲーム開発を手掛けていたクリーチャーズに所属し、黎明期のポケモンカルチャーを音楽面から創り上げた立役者です。関係者の証言や当時の制作秘話によると、戸田氏は「子どもが親元を離れて旅立つときの、強がりと少しの寂しさが入り混じったリアルな感情」を短い言葉に凝縮することを目指しました。単なる「さようなら」ではなく、「さよならバイバイ」と畳み掛けるリフレインによって、10歳の少年が振り返らずに駆け出していく躍動感と、幼少期の日常に別れを告げる決意が見事に表現されています。
また、「マサラタウン」という地名の由来・元ネタについて、ゲームフリークの公式設定資料や原案者である田尻智氏の言及では、「何色にも染まっていない、真っ新(まっさら)な白」を意味しています。赤や緑、青といった鮮やかな世界へ飛び出す前の、無垢な原点。主人公サトシにとって、マサラタウンとは「帰るべき故郷」であると同時に、「何度でも自分をリセットして新たな一歩を踏み出すスタートライン」という意味が込められていたのです。