彼の才能が日本中に知れ渡るきっかけとなったのは、言わずと知れたお化け番組『8時だョ!全員集合』だ。毎週全国の公会堂から生放送され、脅威的な視聴率を叩き出していた舞台で、弱冠20代の青年はいかにして全国民の心を掴むに至ったのか。ステージ上の大仕掛けなセット崩壊や豪快な水かぶりといった過酷な演出のなかで、彼は人間の滑稽さを全身で表現し続けた。
その後、彼の代表的キャラクターとなったのが『志村けんのバカ殿様』である。白塗りメイクに殿様の衣装という極めてナンセンスな設定でありながら、家臣たちとの絶妙なやり取りや、不意に繰り出される「アイーン」のポーズは番組のクライマックスとして欠かせない看板となった。時代が移り変わっても古びないキャラクターの強みは、人間の普遍的な愚かさとおかしみを温かい眼差しで描き続けていた点にある。