ネット上の掲示板やSNSでは「スピリタスをストレートで一気飲みして救急搬送された」「一口で息ができなくなった」といった武勇伝めいた体験談が散見されます。アルコール度数96度という数値が人体に与える影響は、一般的な蒸留酒(40度前後)とは次元が異なります。
高濃度エタノールが口腔内に触れた瞬間、粘膜から急激に水分が奪われ、激しい脱水症状と化学熱傷に似た激痛が走ります。揮発した高濃度アルコール蒸気が気道に吸い込まれると、喉の痙攣や呼吸困難を誘発するリスクすらあります。胃壁への直接的なダメージも深刻で、胃炎や急性胃粘膜病変を引き起こす引き金になりかねません。
「スピリタスは一口で致死量に達する」という極端な噂がありますが、これは正確ではありません。医学的に定義されるアルコールの半数致死量(純エタノール換算で体重1kgあたり約5〜8g)から計算すると、体重60kgの成人男性における純アルコール致死量は約300〜480ml(スピリタス換算で約310〜500ml)です。しかし、度数96度の液体をストレートで短時間に摂取した場合、血中アルコール濃度が瞬時に「泥酔・昏睡期(0.4%以上)」へ跳ね上がり、呼吸中枢の麻痺による即座の生命危機に直結します。「一口で死ぬ」わけではないものの、ストレートでの一気飲みは文字通り命を落とす行為であることに疑いの余地はありません。
原産国であるポーランドにおいて、スピリタスはそもそも「ストレートで飲むもの」として製造されていません。現地では薬草酒や果実酒(ナレフカ)を仕込むためのベース、あるいは精製水を加えて度数を落として楽しむための高純度原酒として流通しています。