ネット上の掲示板やSNSでは、「発売前の新作ゲームを朝から晩までタダで遊べて、お金までもらえる神バイト」という書き込みが散見されます。しかし、実際に現場でコントローラーを握った元テスターたちの証言に耳を傾けると、その牧歌的なイメージは一瞬で打ち砕かれます。
大手クチコミサイト(OpenWork等)や元スタッフの回想録によれば、現場での日常は「プレイを楽しむ」こととは対極に位置する、泥臭い科学的実験の連続です。
「朝の9時から夕方まで、あるエリアの壁という壁に向かってキャラクターを突進させ続け、すり抜けバグが起きないかをひたすら確認する。ジャンプの角度を1度ずつ変えて何千回も同じ動作を繰り返すうちに、自分が何をしているのか分からなくなる瞬間がある」(元アルバイトテスターの証言)
さらに過酷なのは、「バグを見つけた後」のプロセスです。単に「動かなくなった」と騒ぐだけではプロのテスター失格とみなされます。「どのマップのどの座標で、どのアイテムを装備した状態で、どのボタンを何フレーム同時押しした際に不具合が発生したか」という再現手順を論理的な文章に落とし込み、開発チームのプログラマーへ正確にレポートしなければなりません。
腱鞘炎との戦い、眼精疲労、そして何より「プライベートでゲームを見るのも嫌になる」というバーンアウト現象。大好きなゲームだからこそ、純粋なエンタテインメントとして楽しめなくなる葛藤を多くのテスターが経験しています。しかしその一方で、何十万文字にも及ぶテキストの誤脱を一つひとつ潰し、世界同時発売を迎えたタイトルが無傷で世に送り出された時の達成感は、他のアルバイトでは絶対に味わえない特別な誇りとなっています。