織田裕二を語る上で、インターネット黎明期から根強く囁かれていたのが「独身貴族」ゆえのゲイ疑惑や、結婚発表時の「偽装結婚説」といった根拠のない噂でした。20代から40代前半まで浮いた噂が極端に少なく、バラエティ番組でもプライベートな恋愛観を一切語らなかった姿勢が、ネット社会特有の歪んだ憶測を生む温床となっていました。
しかし、取材の積み重ねによって判明している事実は、そうしたゴシップとは対極にあります。沈黙を守り続けた最大の理由は、「役者が私生活を晒せば、観客がスクリーンの中で役柄ではなく役者本人を見てしまう」という、昭和の名優たちが尊んできた映画的リアリズムへの忠誠心でした。『踊る大捜査線』の青島刑事が家庭の愚痴をこぼす姿を誰も見たくないように、自らの生々しい生活感を遮断することこそが、彼なりのファンに対する誠意だったのです。
結婚後16年が経過した現在も、離婚の危機や不協和音が報じられたことは一度もありません。噂を払拭するために意図的な家族アピールを行うことすら拒み、行動と年月によって事実を証明してきた歩みこそ、織田裕二という表現者の真骨頂といえます。