日本全国に「いけす料理」の文化を根付かせたパイオニアこそが、昭和36年(1961年)創業の河太郎です。創業者の故・古賀栄一氏が「泳ぐ魚を眺めながら、獲れたての鮮度で味わってほしい」という情熱から考案した店内生簀(いけす)システムは、当時の飲食業界に革命をもたらしました。
なかでもイカは非常にデリケートな海洋生物であり、人の手の体温や網の摩擦、わずかな水質変化ですぐに弱り、白濁して鮮度が落ちてしまいます。河太郎では玄界灘から直接海水を循環させる専用設備を整え、職人がイカの急所を瞬時に避けて包丁を入れる「一刀両断の職人技」を継承しています。運ばれてきた瞬間にまだ細かく色を変え、透き通って皿の模様が見えるほどの鮮度は、徹底した温度管理と技術の結晶です。
多くのファンを惹きつけてやまないもう一つの理由が、刺身を食べ終えた後に厨房で調理される「後造り(あとづくり)の天ぷら」です。胴体のコリコリとした食感を刺身で楽しんだ後、ゲソ(下足)やエンペラ(ミミ)をサクサクの軽い衣で揚げる天ぷらは、火を通すことで驚くほどの甘みと柔らかさに変化します。「刺身と天ぷらで二度感動する」という贅沢な食体験こそ、河太郎が元祖にして最高峰と呼ばれる所以です。