俳優・松岡昌宏の歴史を語る上で欠かせないのが、2016年にスタートしたテレビ朝日系ドラマ『家政夫のミタゾノ』です。大柄な体躯を黒髪のロングヘアとスカートに包み、無表情で派遣先の家庭を崩壊・再生へと導く家政夫・三田園薫という役柄は、当初の奇抜な設定という予想を大きく覆し、彼の最大の代表作となりました。
かつて『サイコメトラーEIJI』で見せた粗削りな熱血漢や、『ナースのお仕事』シリーズでの軽妙洒脱な恋人役、さらに『必殺仕事人』シリーズの経師の涼次役で見せた哀愁漂う殺し屋の表情など、松岡は硬軟織り交ぜた役柄を的確に演じ分けてきました。そうした蓄積があったからこそ、三田園薫という極端に戯画化されたキャラクターの中に、どこか人間味と鋭い批評性を宿らせることが可能になったといえます。
撮影現場での松岡は、座長として若手キャストやゲスト俳優への目配りを欠かしません。ミタゾノの劇中で披露される家事の裏ワザについて、自身でも実際に試して検証するなど、プロ意識の高さは現場でも語り草です。単に役を演じるだけでなく、作品全体のトーンをコントロールする演出家的な視座を持っている点が、息の長い人気シリーズを支える根幹となっています。