では、エイの顔の目の位置は一体どこにあるのでしょうか。答えは体の反対側、すなわち「背中側(背面)」です。
水槽の下から見上げているだけでは見えませんが、上からエイを観察すると、エイの背中側の目が隆起するように配置されていることが確認できます。エイは海底の砂地にペタリと体を密着させて生活する「底生(ていせい)生物」です。もしお腹側に目があれば、常に海底の砂利に擦れて傷ついてしまい、周囲を見渡すことができません。上方から接近する天敵(サメや大型魚類)を早期に発見し、上空を泳ぐ獲物を狙うために、視覚器は背面の高い位置へと進化しました。
さらに興味深いのが呼吸のシステムです。魚類は通常、口から水を取り込んでエラから排出しますが、砂地に潜るエイが口から海水を吸い込むと、大量の砂をエラに詰まらせて窒息してしまいます。そこでエイは、目のすぐ後ろにあるエイの噴水孔(ふんすいこう)と呼ばれる特殊な穴から海水を吸い込み、腹側にあるエラ穴(鰓孔)から排出する高度な噴水孔による呼吸システムを確立しました。
また、腹側にあるエイの口と歯の仕組みも独特です。魚のように尖った歯ではなく、硬い貝殻や甲殻類(カニ・エビ)をバリバリとすり潰すために、石畳のように平らな歯が隙間なく敷き詰められた「敷石状咬頭(しきせきじょうこうとう)」を持っています。見た目の愛らしさとは裏腹に、甲殻類の殻を一瞬で粉砕する極めて強力な咬合力を備えています。