「可愛い子には旅をさせよ」という言葉の本来の意味は、「我が子が心底愛おしいなら、手元で甘やかして育てるのではなく、広く厳しい世の中に出して数々の苦労や試練を積ませるべきだ」というものです。
この教訓の根底には、親の庇護下にある温室のような環境では、人間としてのたくましさや判断力が育たないという冷徹な現実認識があります。情愛に流されて過保護に囲い込むことは、長期的に見れば子供の生きる力を奪う行為にほかなりません。
語源を探ると、江戸時代以前の過酷な社会構造が見えてきます。街道や宿泊施設が未整備だった時代、旅とは命を落とす危険すら伴う過酷な移動手段でした。山賊や感染症のリスクに怯えながら自らの足で歩き、路銀(旅費)のやりくりや他者との交渉、突発的なトラブルの解決をすべて独力で成し遂げなければなりませんでした。
つまり当時の旅は、生活力、危機管理能力、精神力を極限まで鍛え上げる「実戦的な社会教育そのもの」だったのです。「可愛い子には旅をさせよ 由来」を紐解けば、現代の気軽な観光旅行とは決定的に異なる、過酷な修行のニュアンスが込められていることが分かります。