天才クリエイターのヴィンス・ギリガンが世に放った『ブレイキング・バッド』は、テレビドラマの歴史を明確に「前」と「後」に分断した。平凡で冴えない高校の化学教師ウォルター・ホワイトが、末期がんと宣告されたことを契機に冷酷な麻薬王へと変貌を遂げていく過程。このグラデーションの精緻さは、もはや文学の領域に達している。
張り巡らされた伏線の美しさと、砂漠の乾いた空気まで匂い立つような構図の妙。ヴィンス・ギリガンは観客に「悪とは何か」「家族のためという大義名分はどこまで許されるのか」を執拗に問いかける。全5シーズンを駆け抜けた先のカタルシスは、今なお並ぶもののない孤高の頂として燦然と輝いている。