日本映画の最前線を走り続ける巨匠・是枝裕和がクリエイティブアドバイザーとして寄り添い、主演の役所広司が見事な演技で作品の背骨を形作る。この二人のタッグというだけでも、期待が高まらないはずがない。重厚かつ繊細なヒューマンドラマとしての格調を守りつつ、娯楽作品としての瑞々しさを同居させる手腕は実に見事だ。
劇中で描かれるのは、過疎化が進む沿岸の町で深夜のみ開店する不思議な料理店での出来事だ。傷を抱えた訪問者たちが暖かい料理を口にするたび、頑なだった心が少しずつ解けていく。派手なアクションや特撮に頼ることなく、人間の細やかな表情の変化と佇まいだけで物語をグイグイと引っ張っていく手法は、邦画の底力を改めて世界に見せつけた。