フジテレビジョンが制作し、木曜劇場の歴史を塗り替えた『silent』。この作品が放った衝撃波は、単なるヒット作の枠を軽々と飛び越えていた。音のない世界で生きる青年と、彼をまっすぐに愛そうとする主人公・青羽紬。紬を演じた川口春奈の芝居は、セリフの行間にある痛切な感情を、指先の震えや視線の揺らぎだけで雄弁に物語っていた。
共演した目黒蓮との研ぎ澄まされた掛け合いは、事前の綿密な手話トレーニングと互いの呼吸への深い信頼感から生まれたものだ。現場関係者によれば、川口はカットがかかった後も役に沈み込み、あふれ出る涙を静かにぬぐっていたという。単なる恋愛ドラマの枠組みを解体し、人と人がわかり合うことの残酷さと尊さをえぐり出した名作の誕生だった。