館内に足を踏み入れると、巨大なイルカのプールもペンギンのパレードもないことに驚かされるかもしれない。しかし、これこそが同館最大の価値だ。魚類中心の一般的な水族館とは対照的に、ここはエビやカニ、ウニ、ナマコ、クラゲといった主役になりにくい生物たちが主役に躍り出る。無脊椎動物の展示種数において日本トップクラスを誇り、研究機関ならではのレアな海洋生物や最新の研究成果まで、他では見られない展示の裏側が存分に公開されている。
水槽をひとつずつ覗き込むと、自然界の複雑なバランスが細部まで再現されていることに気づく。南紀白浜の周辺海域は、暖流の黒潮と沿岸水が交ざり合う生物多様性の宝庫だ。採集されたばかりの珍しい無脊椎動物たちが、研究者の緻密な管理のもとで生息時のありのままの姿を見せている。地味に見える底生生物の一挙一動に、思わず時間が経つのを忘れて引き込まれてしまう魅力を秘めている。