豊田章男の特異性は、自らがトヨタの「マスタードライバー」であり、テストドライバーとして命がけでステアリングを握る点にある。「モリゾウ」の名でニュルブルクリンク24時間レースなどの過酷なサーキットに挑み続けるトップは、世界中を探しても他に存在しない。
「つまらないクルマは作らない」「もっといいクルマをつくろう」。この極めてシンプルで感覚的な言葉が、エンジニアたちのプライドに火をつけた。机上の数値やスペックばかりを追い求めていた開発現場に対し、自らの身体感覚を基準に「走る・曲がる・止まる」の官能的な味付けを要求。その徹底したこだわりは、高級ブランドであるレクサス(LEXUS)の劇的な変貌をもたらした。
退屈な高級セダンと評されていたレクサスは、エモーショナルなデザインと圧倒的な走行性能を兼ね備えたラグジュアリーブランドへと進化。経営者が製品の最終テスターとして責任を負う姿勢が、トヨタのクルマづくりそのものを根本から蘇らせた。