品川区東大井、旧東海道の情緒を今に残す立会川沿いに佇む「吉田屋」。その歩みは幕末の安政3年にまで遡ります。ペリー来航に揺れる江戸の世で創業して以来、関東大震災や幾多の戦火を乗り越え、暖簾を繋いできました。この圧倒的な吉田屋の蕎麦の歴史こそが、訪れる者に唯一無二の安心感と風格を与える土台となっています。
多くの人を魅了してやまない吉田屋の蕎麦が人気の理由は、歴史の看板に甘んじることなく、時代を超えて受け継がれる本物の味と空間設計にあります。門をくぐると迎えてくれるのは、手入れの行き届いた見事な日本庭園。石畳を歩いて玄関へと進むアプローチだけでも、都会の喧騒から切り離された静寂を感じられます。
提供されるのは、江戸の粋を受け継ぐ江戸前手打ち蕎麦の吉田屋ならではの端正な一杯です。厳選した国産そば粉を用い、職人がその日の気温や湿度に合わせて絶妙な加減で打ち上げる二八蕎麦は、滑らかな喉越しと豊かな穀物の香りが特徴です。鰹節の出汁がキリリと効いた濃い目の本返しつゆとの相性は抜群で、伝統を重んじつつも現代人の味覚を満足させる調和が見事に成立しています。