物語の構造上、キリトとアスナの関係性は単なる「ゲーム仲間」から「生死を預け合う唯一無二のパートナー」、そして「VR世界での婚姻」へと不可逆の進化を遂げます。アインクラッドという極限のデスゲーム環境下において、いつ命を落としてもおかしくない思春期の少年少女が精神的・肉体的な温もりを求めるプロセス自体は、作品のリアリティを支える重要な動機付けでした。
しかし、2009年4月に電撃文庫として商業出版されるにあたり、電撃文庫の編集方針およびレーティング基準に照らし合わせ、この露骨な性描写は全面的に修正・削除されることとなりました。電撃文庫版の第1巻において、キリトの部屋で一夜を明かすシーンは、アスナの心理描写や互いの孤独を癒やし合う叙情的な会話へと昇華され、直接的な肉体関係のディテールは読者の想像に委ねる抑制の効いた筆致へと書き直されたのです。
さらに、2012年に放送されたTVアニメ第1期(第10話「紅の殺意」〜第11話「朝露の少女」)では、映像媒体としての放送コード(BPO基準)や幅広い年齢層への訴求を考慮し、極めて繊細で美しい演出的トリートメントが施されました。部屋の灯りが消え、互いに寄り添う手のクローズアップや翌朝の柔らかな朝日の描写に留めることで、ふたりの精神的な結びつきをより純度の高いロマンスとして描き出すことに成功しています。