現代の剣士が八相の構えを学ぶ最も代表的な場が、全日本剣道連盟が制定する「日本剣道形」の四本目です。四本目では、打太刀(仕掛ける側)が八相の構えをとり、仕太刀(応じる側)が脇構えをとって対峙します。陽の気を持つ八相と、陰の気を持つ脇構えが激突する、形の中でも白眉とされる名場面です。
形審査や稽古において八相の構えを正しく執るための要点とコツは、以下の3点に集約されます。
第一に、足遣いと半身のバランスです。日本剣道形四本目の打太刀では、左足を前に出し、体をやや右半身に開いて自然体で立ちます。右足に重心を乗せすぎず、両足に均等に体重を配分することで、前進にも後退にも即座に対応できる「居着かない足」を作ることが肝要です。
第二に、刀の位置と鍔の高さです。刀身は垂直に立てるのではなく、やや刃先を後方に傾けます。右手の親指の付け根(鍔元)を右の口元から頬の高さに合わせ、刀身が相手の視界から見てわずかに斜めの壁を作るように構えます。左手はみぞおち(水月)の前に自然に引きつけ、胸を張って背筋を伸ばします。このとき、右脇が開きすぎると打突がブレ、逆に締めすぎると可動域が狭まるため、鶏卵を一つ挟んだような適度な空間を維持するのが理想です。
第三に、なぎなた競技における八相の構えとの連動性です。『五行の構え - Wikipedia』や全日本なぎなた連盟の指導指針にもある通り、なぎなた競技の「全日本の形」においても八相は極めて重要な役割を果たします。長柄武器であるなぎなたは半身で操る特性上、左右どちらでも八相に構えられます。刀よりもリーチの長い武器を耳元に引きつけることで、相手の打突をかわしつつ遠心力を最大限に利かせた強烈な一撃を叩き込む技術は、剣道の八相と完全に共通する身体原理に基づいています。