佐藤寛子の表現力の幅広さを決定づけたもう一つのメルクマールが、三池崇史監督による米国のオムニバス企画『マスターズ・オブ・ホラー』の一編、『インプリント〜ぼっけえ, きょうてえ〜』だ。岩井志麻子の原作を映画化した本作は、あまりの過激描写から本国アメリカでのテレビ放映が見送られたほどの衝撃作として知られる。
遊郭の陰惨な因習と幻想が交錯する異様な空間で、彼女が見せた迫真の佇まいは、日本映画特有の怪奇美とグロテスクな哀切を見事に体現していた。台詞の抑揚、視線の揺らぎ、恐怖に歪む表情の一つひとつに、観る者の神経を逆撫でするような緊張感が宿る。単なるホラーの犠牲者役にとどまらない、人間の根源的な業を背負った演技は、国内外のカルトシネマ愛好家から今も高く評価されている。