生きて戻った隊員に対し、軍は「戦意喪失」の烙印を押した。だが、彼らが途中で引き返さざるを得なかった背景には、決定的な兵器の欠陥があった。
戦争末期、日本の航空機製造ラインは崩壊していた。熟練工は出征し、学徒や未熟な労働者が組み立てを担当。粗悪なパーツが使われ、燃料には松の根から抽出した「松根油(しょうこんゆ)」が混ぜられた。エンジンが途中で不完全燃焼を起こし、黒煙を上げて失速するのは日常茶飯事だったのだ。
無線機は取り外され、計器類も最小限。「空飛ぶ棺桶」と化した機体で出撃させられた若者が、異変を察知して引き返すのは、過酷な現実に基づく当然の冷徹な判断だった。