百獣の王である唐獅子には、外敵と呼べる存在がいません。いかなる猛獣も恐れぬ無敵の存在ですが、唯一恐れるものがあります。それが自身の体内から湧き出る「獅子身中の虫」です。
仏教の教えに由来するこの伝承では、獅子の体内に寄生した虫がやがて骨肉を食い破り、内側から死に至らしめるとされています。どれほど強大な存在であっても、内部の油断や腐敗によって滅びてしまうという教訓です。そして、この恐ろしい害虫を唯一退治・鎮静化できる妙薬こそが、「牡丹の花から滴り落ちる夜露」でした。
唐獅子は夜になると牡丹の花の下に身を寄せ、その葉から落ちる露を浴びて害虫の猛毒から身を守り、安らかな眠りを得ます。つまり牡丹は、無敵の獅子にとって唯一の安息地であり、命を繋ぐ特効薬なのです。この逸話から、唐獅子牡丹の刺青には「完全無欠の強さ」と同時に、「自らの弱点を自覚し、身内からの破滅を防ぐ護符」としての深い意味が込められています。