平沢進のフジロック出演は、苗場の現地にとどまらず、YouTubeによる公式ライブ配信を通じて全世界のインターネット空間に凄まじい衝撃波を広げました。当時、配信チャット欄やSNS(Twitter / 現X)では関連ワードがトレンドの最上位を独占。「教祖が降臨した」「苗場が急にディストピア都市の首都になった」「光る弦(レーザー)を叩いて音を出している怪人物は何者だ」といった、予備知識を持たない初見視聴者の驚愕と興奮がタイムラインを埋め尽くしました。
文化社会学やオーディエンス研究の視点からこの現象を分析すると、平沢進が持つ「徹底的に作り込まれた神話的世界観」と、インターネットミームとしての「集合的熱狂」が見事に合致した結果といえます。平沢進は1990年代初頭からインターネット黎明期の音楽配信にいち早く取り組み、独自のコミュニティ(ファン層「馬の骨」)を自律的に育んできました。
既存のマスメディアのプロモーションに頼ることなく築き上げられた強固なアーティスト・ファン関係が、フジロックという日本屈指のオープンなフェス舞台で可視化されたこと。そして、そのクオリティが冷やかしやネタ枠としての消費を許さない圧倒的な職人技に裏打ちされていたからこそ、ネット上の熱狂は一過性で終わらず、広範な新規リスナーの獲得へと結実したのです。