本作を語る上で常に議論の的となるのが、「実際の事件をモチーフにしているのか」という点です。結論から言えば、本作は特定の単一事件をそのまま映像化したドキュメンタリードラマではありません。しかし、その根底には1990年代から2000年代にかけて日本社会を揺るがした複数の凶悪少年犯罪と、その後に家族たちが辿った現実が克明に投影されています。
脚本の坂元裕二氏は執筆にあたり、少年犯罪の被害者遺族の手記や加害者家族の追跡ルポルタージュを徹底的にリサーチしました。特に、14歳の中学生が引き起こした凄惨な事件という設定には、1997年の「神戸連続児童殺傷事件」をはじめとする当時の社会背景が色濃く反映されています。
世間の激しいバッシングに晒され、名前や住所を変えて息を潜めるように生きる加害者家族の過酷な逃亡劇、そして時が止まったまま家庭崩壊の危機に瀕する被害者家族の日常。フィクションでありながら、現実の報道以上に「人間の生々しい感情」を炙り出した背景には、取材に基づいた圧倒的なリアリティが存在しています。