炎を自在に操り、寸刻の狂いもなく極上の味を仕上げる。シェフ周富徳が日本の料理界に与えたインパクトは絶大だった。それまで一部の高級店でしか味わえなかった敷居の高い中華料理を、一気にお茶の間の親しみやすい存在へと押し上げた立役者である。
しかし、スポットライトの裏側には過酷な現場とたゆまぬ研鑽があった。早朝からの仕込み、弟子たちの厳格な指導、そして深夜に及ぶメニュー開発。メディアで魅せる明るいキャラクターとは裏腹に、厨房内では一切の妥協を許さない真剣勝負が繰り広げられていた。調理技術だけでなく、食べる人を楽しませる「魅せる調理」の美学は、彼が現場で磨き上げた至高の武器だったのである。