長年、臨床の現場では「単なる嗜好」か「病気」かを巡って議論が交わされてきた。しかし現在、精神医学のアップデートによってその輪郭は明白になりつつある。世界保健機関(WHO)は国際疾病分類の最新版「ICD-11」において、本症状を「強迫的性行動症(Compulsive Sexual Behavior Disorder)」として正式に採択した。
脳科学の観点から見ると、この症状はドーパミンを中心とする脳内報酬系の回路が誤作動を起こした状態にあたる。猛烈なストレスやトラウマ、耐え難い孤立感を和らげるための「自己治療」として性行動が組み込まれ、自律的なブレーキが効かなくなってしまうのだ。アメリカ心理学会(APA)などの研究機関でも、依存行動が及ぼす認知機能への影響が多角的に分析されており、アルコールやギャンブル依存と同等の脳機能障害として捉える理解が定着しつつある。