2026年の今年、やなせ氏の直筆ノートや未公開の手紙が関係者の手によって新たに整理され、ファンの前で明かされた。そこに記されていたのは、最期まで子どもたちの未来を憂い、優しさを問い続けた一節だった。「本当のヒーローは、格好良くなんてない。お腹がすいている人に、自分のパンを無償で渡す存在なんだ」。この秘蔵のメモには、彼が戦争体験を通じて痛感した「飢え」への恐怖と、人間としての切実な答えが綴られていた。
当時、出版社であるフレーベル館から最初に月刊絵本として刊行された際、大人の批評家たちからは「自分の顔を食べさせるなんて残酷だ」「奇妙すぎる」と猛烈な批判が寄せられたという。しかし、子どもたちの反応は正反対だった。図書館や幼稚園で圧倒的な支持を集め、やがて時代を象徴するロングセラーへと育っていったのだ。