タレントとして確固たる地位を築いていた彼が、40代を迎える直前に大きな人生の岐路に立ちます。テレビ業界で消費され続けることへの焦燥感や、「自分の足で一生続けられる芸を持ちたい」という強い危機感を抱いていた2000年代後半、先輩芸人である東野幸治の勧めをきっかけに落語の世界と出会いました。
名人・桂枝雀の演じる「貧乏花見」や「高津の富」などの古典落語に衝撃を受けた彼は、独学で稽古を重ねた末、2008年に上方落語の重鎮である月亭八方に弟子入りを果たします。「月亭方正」の高座名を授かり、過酷な前座修行や寄席での出番を真摯にこなしていきました。
そして2013年、芸名を本名の「山崎邦正」から「月亭方正」へと完全に統一することを発表。バラエティの売れっ子タレントが伝統芸能へ本格参入することに対しては、当初演芸界や世間から懐疑的な視線も向けられました。しかし、落語に対する並々ならぬ情熱と真摯な高座姿勢によって、周囲の雑音を実力でねじ伏せていったのです。