彼が手がけた『口訳 古事記』をはじめとする古典再解釈の仕事は、出版界においてひとつの「事件」として語り継がれている。お堅い神話や古典文学が、彼の手にかかると一変する。神々がジタバタとジレンマに悩み、情けない言い訳をのたまい、人間臭い欲望をむき出しにする——そのドライブ感あふれる語り口は、古典へのハードルを一気に粉砕した。
難解な原文の意図を完璧に噛み砕きながらも、町田流のリズムで現代に蘇らせる手腕。単なる意訳ではない。古代人の魂と現代の我々を直結させるような文体のマジックだ。2026年の今、この「口訳」のアプローチは若い世代の副読本としても浸透し、文学の新しい楽しみ方を提示し続けている。