ネット上の検索クエリやSNSの言及で頻繁に見受けられるのが、「夏の扉の作詞は松本隆ではないか」という誤認です。松田聖子の全盛期を語る上で作詞家・松本隆の存在は不可欠ですが、時系列を丹念に追うとその境界線が明確になります。
松田聖子と松本隆の黄金タッグが本格的にスタートしたのは、本作『夏の扉』の次作にあたる6thシングル『白いパラソル』(1981年7月発売)からです。つまり、『夏の扉』は三浦徳子が手掛けた初期・松田聖子ワールド(『裸足の季節』『青い珊瑚礁』『風は秋色』『チェリーブラッサム』)の集大成とも言える記念碑的作品なのです。
三浦徳子の作詞スタイルは、直感的でエネルギーに満ちた言葉選びと、サビでリスナーを一気に巻き込むキャッチーさが特徴です。のちに松本隆が持ち込んだ「文学的で映画のような情景描写」とは一味違う、初期特有の眩しいまでの衝動性とポップなスピード感こそが、『夏の扉』を唯一無二のサマーチューンたらしめている理由と言えます。