沿岸地域の水産業にとって、潮汐は自然の恵みを収穫するためのクロックそのものだ。例えばノリの養殖やアサリなどの採貝漁業では、干潮時に露出する干潟を利用して作業が行われる。大潮の干潮時には、普段海底に沈んでいる広大なエリアが陸地と化すため、一度に大量の収穫が可能となるのだ。
ここで意外と知られていない真実がある。干潮の瞬間に海が静まり返る「潮止まり」の前後では、海水中の酸素濃度や水温が局所的に急変するということだ。この急激な環境変化は、魚類の行動パターンを一変させる。ベテランの漁師やアングラーは、単に潮の満ち引きを見るだけでなく、潮の動きがもたらす微細な水質や浮遊プランクトンの移動までを読み切ってアプローチを変えている。
マリンスポーツにおいても、潮の高さによって波のブレイクの質が劇的に変わる。浅いサンゴ礁やリーフのポイントでは、干潮時には底の岩が露出してサーフィンが危険になる一方、満潮時には穏やかな波へと姿を変える。自然の波は潮位と底質(ボトム)の複雑な掛け合わせによって生み出されているのだ。