春を告げる音の代名詞といえば、イタリアの鬼才アントニオ・ヴィヴァルディが遺した傑作だ。彼が描いたヴァイオリン協奏曲第1番『春』(ヴィヴァルディ)は、単なる美曲の域にとどまらない。楽譜の端々には、鳥のさえずりや牧童の居眠り、吠える犬の声までもが精巧な音符として刻み込まれている。
ヴァイオリン協奏曲という形式を確立した彼のアプローチは、当時の音楽界に大きな衝撃を与えた。ソロ・ヴァイオリンが跳ねるように奏でる重音奏法は、冬の寒気を吹き飛ばす太陽の光そのもの。自作のソネット(詩)を音楽へ緻密に翻訳した構造を知ると、聞き慣れた旋律がにわかに立体的な風景画へと変貌する。