過疎化と高齢化に悩む北海道の沿岸自治体にとって、野生ラッコの出現は千載一遇のチャンスでもある。「野生のラッコに会える町」としてプロモーションを行えば、国内外から多くのネイチャーツーリズム客を呼び込むことができる。実際、双眼鏡を片手に岬を訪れる観光客は年々増加しており、地元のホテルや飲食店には好影響が出始めている。
だが、自治体側も手放しでは喜べない。観光振興を大々的に推し進めれば、生活の糧を奪われかねない地元漁師たちとの摩擦が深まるからだ。「観光と漁業のバランスをどう取るか、非常に繊細な舵取りを迫られている」と、ある自治体関係者は匿名を条件に語った。人気者に群がる光と、その影に潜む地域社会の分断は、容易には解決できない根深い問題を孕んでいる。