多くの視聴者が「なぜ急に死んでしまったのか」「何者かに襲われたのか」と衝撃を受けたお父さんの死。作中では雨が降りしきる中、増水した用水路の底に横たわる狼の姿と、傍らに落ちていた鳥の羽が映し出されるのみで、具体的な死亡の瞬間は直接描写されていません。
この疑問を解き明かす決定的な手掛かりは、細田守監督自らが書き下ろした原作小説版『おおかみこどもの雨と雪』に記されています。そこには、第二子である雨を出産したばかりの花を気遣い、野生の本能から「栄養価の高い獲物を狩って食べさせたい」と願った彼の行動が明確に綴られていました。
彼が狙った獲物はキジ(雉)でした。都会の片隅に潜む獲物を追い詰めたものの、足元をすくわれて激流の用水路へ転落。人間以上の体躯と生命力を持つ彼であっても、都市型水路の垂直に切り立ったコンクリート護岸は爪が立たず這い上がることができず、そのまま溺死に至ったというのが真相です。
純粋な家族愛と狼としての野生の本能が、皮肉にも近代的な都市インフラの罠によって絶ち切られてしまうという、あまりにも理不尽でやるせない事故死だったことが分かります。