芸能界とデザイン界という異なるフィールドで活躍していた二人が、どのようにして結ばれたのか。関係者の証言や当時のインタビュー資料によると、出会いのきっかけは文化・芸術関係者が集う交流の場や共通の知人を介した縁でした。
仲代達矢主宰の「無名塾」で徹底的にリアリズムと表現の厳しさを叩き込まれた渡辺梓は、ストイックに役と向き合う表現者としての芯の強さを持っていました。一方の稲吉紘之氏もまた、妥協を許さないビジュアルデザインの探求者であり、本質を見つめる芸術的感性を共有できる間柄でした。
当時の取材記録によれば、渡辺梓は夫について「物事の本質を鋭く見つめる視点と、クリエイティブに対する真摯な姿勢に強い敬意を抱いた」と周囲に明かしています。表面的な華やかさに流されず、互いのものづくりや表現への情熱をリスペクトし合えたことこそが、交際から自然な流れで結婚に至った決定的な理由でした。