このジャンルの潮目を決定的に変えた存在といえば、ピースの又吉直樹を外して語ることはできない。芥川賞を受賞した『火花』は、純文学の文脈でありながらお笑い界の知られざる熱量と残酷な現実を見事に描写し、記録的な大ベストセラーとなった。
だが、その金字塔の裏には壮絶な執筆秘話が存在する。単独ライブの準備やテレビ収録の合間を縫い、寝る間も惜しんで原稿用紙に向かい続けた日々。お笑い芸人が小説を書くことに対する世間の偏見や風当たりをはね返し、圧倒的な文筆力で周囲を黙らせた。彼が切り開いた道のおかげで、「笑い」を生み出す芸人の言語感覚が正当に評価される時代が到来したのだ。