柳川悠二の名を一躍全国に知らしめた金字塔が、2014年に発表された『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』(新潮社)です。1992年夏、甲子園球場が怒号とメガホンの嵐に包まれた星稜対明徳義塾の試合。あの日、グラウンドに立っていた両校の監督、敬遠を指示された投手、打席に立ち続けた松井秀喜、そして敬遠を実行した当事者たちを20年以上の歳月を経て徹底追跡しました。
特に、敬遠策を実行したことで世間から激しいバッシングを浴び、人生の軌道修正を余儀なくされた元球児たちの葛藤を描き切った点は、選考委員から絶賛を受け、第47回大宅壮一ノンフィクション賞の栄誉に輝きました。高校野球という巨大なシステムが、多感な高校生たちに背負わせた十字架の重さを浮き彫りにした傑作です。
さらに柳川は、高校野球界の頂点に君臨しながら衰退の一途をたどった名門の謎に挑みます。『永遠のPL学園 六十六年目の真実』および『PL学園最強世代 あるキャプテンの告白』では、1998年世代の主将・平石洋介らの証言を軸に、絶対的な上下関係、伝統の「付き人制度」、宗教母体との確執など、内部の人間しか知り得ない組織の病理を克明に記録しました。