日本がコンセッション方式を推進する一方で、世界の主要都市では「水メジャーの撤退と水道再公営化」という逆流現象が起きています。民営化の先進地であった欧米諸国が、なぜ再び公営へと舵を切ったのか。その理由は明確です。
象徴的な事例がフランスの首都・パリ市です。パリ市は1985年から25年間にわたり、ヴェオリアとスエズの2社に水道運営を委託していました。しかし、その間に水道料金は260%以上(約2.6倍)に暴騰。民間企業側が莫大な利益を配当へ回す一方、設備投資が後回しにされ、漏水率が悪化する事態に陥りました。市民の激しい反発を受け、パリ市は2010年に契約更新を拒否し、公営企業「オー・ド・パリ」を設立して水道を取り戻しました。再公営化後、パリ市は料金を即座に約8%引き下げ、浮いた利益をインフラ更新へと再投資しています。
また、完全民営化を選択したイギリスでも深刻な事態が発生しています。最大手のテムズ・ウォーターは、投資ファンド主導の経営下で巨額の配当を出し続けた結果、150億ポンド(約2兆8000億円)を超える巨額債務を抱えて経営危機に陥りました。老朽管の破裂による道路冠水や未処理下水の河川放流が日常化し、実質的な公的資金注入(一時的な国有化)が取り沙汰される事態となっています。
「民間に任せればすべてが安く効率的になる」という前提は、海外の現場において数多くの失敗という形で覆されているのが現実です。