力士たちの美しい髷を作り上げているのが、相撲部屋専属の職人「床山」の存在だ。特等から五等までの階級に分かれた床山たちは、何種類もの専用の櫛(スキ櫛や前髪櫛など)と「元結(もっとい)」と呼ばれる特殊な和紙のこよりを使い、毎朝力士たちの髪を手際よく結い上げる。
この床山によるびん付け油を用いた結い方には、激しい衝撃に耐えうる緻密な工夫が凝らされている。使用される「オーミすき油」に代表されるびん付け油は、独特の甘く芳醇な香りを漂わせるだけでなく、非常に高い粘度と耐水性を持つ。髪にまんべんなく塗り込むことで、頭頂部同士が激突する強烈な立ち合いでも髷が崩れず、同時にクッションとして頭皮や頭蓋骨を保護する役割を果たしている。
固い元結を力強く歯で噛み締めながら一気に縛り上げる技法は、長年の修行を積んだ床山だからこそなせる業だ。結髪台の前に座る力士と床山の間には、言葉を交わさずとも通じ合う深い信頼関係が築かれている。