本作を単なる心温まる猫のファンタジーと受け止めるのはあまりにも浅はかだ。物語の骨子をなすのは、読書という神聖な行為を効率や消費、見栄の道具に成り下がらせた現代社会に対する強烈な告発である。
作中の「迷宮」に潜む者たちは、本を読まずに飾って誇示する者、ページを機械的に切り刻んで速読を自慢する者、売れ筋だけを粗製濫造する出版社など、現代の読書環境を痛烈に風刺した存在ばかりだ。読者が手軽さや即効性ばかりを求めたとき、本はその内に秘めた魂を失う。他者の痛みに寄り添い、想像力を羽ばたかせるための本が、ただの「消費財」と化した未来に何が残るのか。この容赦ない衝撃のメッセージこそが、国境を越えて読者の胸に刺さり続けている。