1980年代、『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった『キン肉マン』において、主人公スグルが「牛丼一筋300年」と歌いながら頬張っていたのは、紛れもなく吉野家の牛丼でした。当時、まだ高校生だった作者のゆでたまご両氏が、大阪から上京した際に初めて食べた吉野家の味に感動し、「この美味さを漫画で伝えたい」という純粋なファン心理から作品に無償で登場させたのが始まりです。
折しも1980年、吉野家は急速な店舗拡大の失敗などから会社更生法を申請して事実上の倒産に追い込まれていました。再建へ向けて苦境に立たされていた同社を救ったのが、アニメ化に伴う爆発的な『キン肉マン』ブームです。子どもたちが吉野家へ殺到し、牛丼は一躍全国区のポピュラーフードへと成長。ゆでたまごサイドは一切の宣伝料を要求せず、純粋な作品愛から吉野家を無償で大々的にPRし続け、再建への莫大な後押しを果たしました。
なお、1983年にスタートした初代テレビアニメ版では、放送枠のスポンサーに名乗りを上げたなか卯との兼ね合いから、アニメ内の設定が一時「なか卯の牛丼」に変更されるという大人の事情もありましたが、原作漫画におけるスグルの吉野家愛は終始一貫していました。