しのぶの遺志を継ぎ、童磨に立ち向かう栗花落カナヲと嘴平伊之助の戦いもまた、作品屈指の感情的クライマックスだ。肉親の愛を知らずに育った伊之助の実の母・琴葉の命を奪った過去が明かされる瞬間、戦いは個人的な怨念を超えた精神のぶつかり合いへと変貌する。
感情を殺して生きてきたカナヲが、童磨の虚妄を見抜いて放つ「貴方、何のために生まれてきたの?」という辛辣な言葉。それは童磨の心なき急所を的確に貫いた。感情を持たない鬼に対し、傷つきながらも感情を獲得した人間たちが意志を繋いで挑む姿は、人間の尊厳をテーマとした本作の核心を鋭く突いている。